加美町の猪股洋文町長が掲げる「善意と資源とお金の循環する、人と自然に優しいまち」に国立音楽院宮城キャンパスが掛け合わされることで、3本柱である①「里山経済の確立」には、楽器製作のまちとして、イタリアのクレモナやドイツのミッテンヴァルトのような楽器工房と道具屋・材木屋などが立ち並ぶ商店街の活気を構想したり、②「健幸社会の実現」には、街中の音楽イベントに積極的に参加したり、音楽療法士の育成・派遣で高齢者施設へ音楽を届ける若返りリトミックの導入など健康と幸せを音楽で盛り上げ、 ③「子ども子育て応援社会の現実」には、幼児リトミックの導入で母子が一体となって音楽に触れあうコミュニティーを拡大して、子育ての基盤作りに貢献して、移住・定住の促進に積極的に寄与していきます。
地方創生の具体例として、廃校再活用のアイディアが全国の自治体で出されておりますが、加美町でも2014年3月31日に廃校となった上多田川小学校を音楽の町作りの拠点とするべく、国立音楽院の誘致場所として活用する運びとなりました。外観は廃校とは思えない平屋建てのおしゃれな校舎、そして窓ガラスが多く使用されているので、楽器製作には最適な自然光を存分に取り入れられる環境でしたので、感謝の気持ちを少しでも表現できればと、地元の子ども達が通っていた小学校の面影をなるべく残す為に、最小限の改築で収まる様に工事担当とも話を進めました。また、国立音楽院だけが使用する場所ではなく、地元の方々が自由に出入りできる、開放された環境にする為に、食堂であったスペースをオープンカフェのようなコミュニティスペースにして、演奏会や交流会を催すと共に、地場で取れた米や野菜を使った給食を導入して、生徒も加美町の魅力を食でも感じられるように工夫していきます。
東京校で確立している楽器製作・修理の技術者と国立音楽院の長年培った「音楽と福祉」を具現化するリトミック指導員と音楽療法士を加美町で育成することで、宮城県を中心とした東北地方にも「音楽の仕事」を波及していくことが可能となります。音楽を好きな気持ちは強く持っているが、その変換方法が分からない方は、本当にたくさんいらっしゃいます。日本も戦後の貧しい時代から、先輩方のおかげで大変豊かになり、物の時代から心の時代へと確実に変遷しております。仕事に対するプライオリティーも収入より心の満足度を大事にする方々が増え、音楽の道を諦めてお仕事に就いた社会人の方は、仕事をすればするほど音楽への思いが強くなり、原点回帰して国立音楽院の門を叩く方が近年急増しております。やりたい仕事がないから都心部へ若者が流出しているのであれば、魅力ある仕事を創ることで地方に若者を引き寄せることが可能になると感じております。
ヴァイオリン製作者、管楽器リペアラー、ピアノ調律師、ギタークラフト・リペアラーなど技術系学科から巣立つ技術者を社会に送り出す場所として、宮城キャンパス内に楽器工房を新設します。工房に訪れて頂くためにはこちらからPRしなくてはいけませんので必然的に、町の学校に訪問したり、楽団と交流をすることになります。町の方に愛され信頼される楽器工房に成長できるように、 楽器製作や修理の技術だけではなく、コミュニケーション能力の向上にも力を入れております。普段は無口でも楽器のことになると、堰を切ったように話し出す生徒も少なくありません。好きなことを活かす理由はそこにあると感じております。
詳しくは加美町HPへお問い合わせ下さい。
加美町商工観光課が推し進める「中新田地区商店街にぎわいづくり委員会」。石畳の花楽小道を中心に50ほどのお店や施設が加盟して商店街の盛り上げを図っております。技術系の学科と地元刃物製作所との連携やバッハホールでの演奏など、加美町の商店街とのつながりを音楽交流を通して表現することで、宮城キャンパスが加美町にできることの成果を地元住民の方々に還元したいと思っております。
宮城キャンパスの特徴は、都会では体験できない農業を学校の年間スケジュールに組み入れる試みや、町のお祭りに音楽で参加するスタイルで能動的に交流を図ったり、宮城キャンパスの食堂を開放して、町民を招いた演奏会を行ったり、地元の食材を使った給食を生徒が食べる受動的な交流を通して町民の皆様と触れあう機会を作っていきます。 顔と顔を合わせたコミュニケーションを積極的に行うことで、土地に根ざした音楽教育施設に成長していくと確信しております。